歯ぐき下がり(歯肉退縮)を治療した症例 その1
治療前
治療後
40代男性。歯ぐきが痩せた(下がった),しみるという訴えで来院。
上顎の口蓋から,患者さん自身の結合組織を採取します。採取する部位にも当然麻酔はしますので,術中に痛みはありません。
採取した結合組織を歯ぐきが下がった部分の根っこの表面に設置し,縫合します。この部位に行ったのはModified Coronally Advanced Tunnelという術式です。これはベルン大学のSclean教授が2013年頃から報告している術式で,通称MCATと呼ばれています。歯ぐきの切開を最小限にした術式のため,術後の痛みや腫れ,治療の失敗が少ない術式と考えられています。
『Treatment of multiple adjacent Miller class I and II gingival recessions with a Modified Coronally Advanced Tunnel (MCAT) technique and a collagen matrix or palatal connective tissue graft: a randomized, controlled clinical trial.』という論文においては,患者自身の結合組織を使う方が,合成されたコラーゲン製剤で手術を行うよりもいい成績が得られたと記載されています。
患者さんからすると,上顎から歯ぐきを採取するというと怖いような,痛いような不安があると思いますが,よりよい治療成績を得るためには,現在のところご自身の組織を使うのが最も効果的ではないかと思っています。
手術後は2週間程度で抜糸をします。術後の歯磨きは慎重に行う必要がありますので,歯科衛生士から細かく指導をしています。
*歯ぐきの再生治療,歯ぐき下がりの改善は自費診療になります。
治療費用は1歯60,000円,エムドゲインやリグロスなど再生材料を使用する場合は材料代が別途かかります。
治療によるデメリットととして,手術を行っても思い通りの治療結果が得られないことがあります。治療後にも根面の露出が残存することがあります。知覚過敏が思うように改善されない場合があります。